原義から理解(7)breach vs. infringe

侵害の訳語として [ breach ] と [ infringe ] があります。
どう使い分けるのでしょうか?

[breach]は、「壊して作られた穴」という原義をもつ名詞から動詞になった際に、 ”壊して穴を作る" という語義を持つ動詞として生まれてきました。
ここで注意ですが、穴を作る、わけですので、全てを壊すわけではない、ということです。
全壊となると、穴もないですから。

[breach] は、契約に違反するという文脈でよく使われます。
ここで、契約とは、様々な約束事を複数の条項としてひとまとめにしたものです。
契約に違反するというのは、様々な条項を一つにまとめた契約の、とある条項を守らなかったことで、契約という一枚岩を壊して穴を作っているというイメージです。
だから契約違反には [breach] が良く使われているのです。

[infringe]は、"infringere"というラテン語に語源があります。
この "infringere" は「砕く、破砕する」という意味です。
ただ壊すのではなく、「砕く」つまり、「打ちこわしてこなごなにする」(広辞苑)ことが [infringe] です。
この [infringe] は知的財産権の侵害で良く使われます。

知的財産(たとえば著作物)を著者に無断で使う(勝手に印刷して売る)と、著作権(知的財産権)の保障が全く無意味になります。
この著作権侵害行為は、著作権を打ちこわしてこなごなにしていることになるんですね。
だから知的財産権の侵害にはよく [infringe] が用いられているわけです。

侵害には、
一部に穴をあけるくらいであって、全体を壊すほどではないものと
全体をこなごなにして破壊してしまうものがあります。
侵害の程度は様々ですので、その程度に合わせた単語を使用する必要があります。
侵害=breach=infringe ということではないので、意味の違いをしっかりと押さえることが不可欠です。

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    前回の記事は、原義から理解(6)articleです。
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