視点の重要性<リーガル翻訳>債権・債務

視点とリーガル翻訳

リーガル翻訳においても、視点が大切です。
契約書などのリーガル文書によく出てくる用語として、「債権」と「債務」があります。
たとえば、
AがBに自己所有の建物を1,000万円で売却するという売買契約を締結した場合、この契約により売主Aと買主Bの間で、たとえば次の法効果が生じます。

  • A→B 
    • Aの代金1,000万円の支払いを求めることができる権利(債権)
    • Bの代金1,000万円を支払う義務(債務)
  • B→A 
    • Bの建物の引き渡しを求めることができる権利(債権)
    • Aの建物引渡義務(債務)

何に着目するかで、売主Aは債権者にもなり、債務者にもなります。

  • 代金に着目すれば、
    • Aは債権者
    • Bは債務者
  • 建物に着目すれば、
    • Bが債権者
    • Aが債務者

視点によって、同じ人が債権者になったり債務者になったりしますので、どの視点(代金か建物か)から見ているのかをしっかりと意識しておく必要があります。

landとground

たとえば、
[land]と[ground]という単語があります。
どちらにも「陸」という意味がありますが、視点が違うので使い方に違いが出てきます。

  • land=に対する陸
  • ground=に対する陸

という視点の違いがあります。

  • land=海との対比での「陸」
  • ground=空との対比での「陸」

です。
たとえば、
次の文はどうでしょうか?

  • 1:The sailor sighted land in the distance.
  • 2:The airplane pilot sighted ground from the sky above.
  • 3:The airplane pilot sighted land in the distance.

1:海上にいる水夫が遠くに見た陸は、海との対比での「陸」ですから[land]です。
2:陸上を飛んでいる飛行機のパイロットが上空から見た陸は、空との対比での「陸」ですから[ground]です。
3:海上を飛んでいる飛行機のパイロットが遠くから見た陸は、海との対比での「陸」ですから[land]です。

同じ飛行機のパイロットであっても、空との対比での「陸」なのか、海との対比での「陸」なのかで、[ground]と[land]の使い分けがあります。

リーガル翻訳における視点

上で検討したように、
リーガル翻訳においては、視点によって、同じ人が債権者になったり債務者になったりするので、視点(代金?建物?)を意識することが正確な翻訳に必須となります。

何についての債権・債務なのか?

当然のことですが、
翻訳において文脈の重要性が強調されます。文脈を無視した機械翻訳のような訳がいい訳になることがないのは当然です。文というのは常にそれまでの文の流れを受けているからです。

リーガル翻訳でいう文脈の一つは、何についての債権・債務なのか?です。

  • 代金であれば、売主Aが債者で買主Bは債者です。
  • 建物であれば、売主Aは債者で買主Bが債者です。

法論理と翻訳学校についてもご一読いただけると幸いです。
なお、
リーガル翻訳者養成の翻訳学校は、リーガル専門の翻訳会社(英文契約書作成会社)である株式会社 英文契約サポートセンター沖縄が運営している翻訳学校です。

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